長すぎる雨







「オリ、ヴィエ・・・。寝た、の、・・・か?」
あの男にもぎ取られたはずの半身に温もりを感じる。
オリヴィエがくたばりかかって意識を放りながらも、俺の身体を暖めようとしているのだ。

フ、おかしな奴だ・・・。

行きずりに俺が目に止めたのが、コイツに取っちゃ、不運の始まりだったに違いない。

どんどん、身体が泥に沈むように重たくなっていく。
魂が肉体から離れたがっているのか・・・。
不思議だな、何故こんなに心地よいのだろう。
このまま、コイツの隣で眠ってしまいたい。

だが、まだ俺にはやるべきことが。

ヴィルムは冬眠に入れば、生命活動のほとんどを停止出来るという。その間に、長い時間をかけて、その傷も治癒出来るだろう。
問題は、俺のこの体で、コイツの体を洞窟の奥、安全な場所に封じることが可能かどうかだ。

あぁ、アイツを。
俺の手で、ぶっ殺してやりたかったのに。
アイツをぶっ壊して、引き裂いて。
清々して、眠りにつきたかったのに。
なぁ?オリヴィエ。
お前も、巻き込まれ損じゃないか?

「い、ま・・・。寝床に、連れて行ってやる、から。まだ、くたばるなよ・・・。オリヴィエ・・・。」

あぁ、チクショウ。
目が霞む。
重てぇ、俺の身体が。
重てぇ・・・抱えるようにしてなんとか引きずっているオリヴィエの身体が。

「はっ、ぁ・・・。」

重て・・・ぇ・・・。

脳裏で、あの男が高く低く嗤っていやがる。
英雄だと?
くそったれ、あの化け物め。覚えてやがれ。
いつか必ず、貴様、を・・・。

「死ぬな。オリヴィエ・・・。俺は、お前に・・・まだ・・・。」

ヒトを殺してはいけないと。
もう俺を窘めるやつが、いなくなっちまうだろ?

「おい・・・、起き、・・・ろ。・・・ィエ。」





終。


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