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リュミオス・ルヴァヴィエ・ロキエル

●リュミオス
(リュミ様のお誕生日に)

「お前のトコの成人の儀式は家の鍵を貰うんだったか…」
と起き抜けの嗄れた声でオスカーが呟いた。フワフワとレースのカーテンが既に日が高い事を知らせているので、起きなければとは思っているのに身体が怠い。
「まぁそうですね、それが?」
となんとなく寝返りを打って問うと、
「いや、ちょっと見てみたかったなと」
ボンヤリと本気かどうか判然としない感じで再度呟き。それから、ゴロリと彼もこちらに寝返りを打つ。思いの外顔が近いのに驚いて、なんとなく視線を伏せると昨夜の名残でオスカーの胸筋や鎖骨に紅い印が付いているのが目に入る。誘われるように指先を滑らせる。
「けれども、私はそのように家族に祝われる事はなかったので」
と何となく呟いて、ヒタリと彼の胸に手を当てる。暖かい。それに鼓動の気配。チロリと目を彼のアイスブルーに戻すと、顰め面の瞳と目が合った。
「すまん…と言うところか?」
「さぁ、どうでしょう?」
真顔で返す。ジッと暫し見つめ合い。
彼の骨張った指が伸びて、私の顔に掛かった髪をスルリと後ろに撫で付ける。それから。
「俺が祝ってやろうか?」
阿呆のような提案は、けれども存外真面目な顔つきで。クスリと鼻に笑いが抜けてしまう。『何を?』と問い返すのも無粋な気がした。ふと思いついて
「では寝坊の朝を」
と提案してみる。
一瞬、薄氷の瞳を見開いてから、彼は目を細めてはっきりと笑った。
「フ、ハハッ!寝坊の朝を共に迎えられた事を?」
繰り返してから、背を丸めてクックと彼は喉で笑い続ける。そんなに笑うような事だろうか?眉を顰めて
「では結構です」
と再び寝返りを打って彼に背を向け、布団に包まる。
どうせ寝坊なら、午睡までこのまま眠ったって私は構わないのだからと思っていると、ガバリと後ろから筋肉質な腕が伸びて布団毎引き寄せられる。ゲラゲラと無神経に笑いながら、
「拗ねるなよ、いいじゃないか。寝坊の朝を祝うブランチとしけこもうぜ」
等と言う対の守護聖に、私は呆れて溜息を吐く。
「苦しいですよ、オスカー」
と思ってもない事を口にしながら、差し込む陽の光に目を細める。寝坊の朝を祝うブランチは、今暫く、この温もりの中で微睡んでからでもいいだろうか。気怠さに任せて、私はもう一度瞼を下ろした。


●ルヴァヴィエ『限界を描けない宇宙』@nodokiri さんより

「宇宙ってさ。存続し続けなきゃならないわけ?」
「難しい質問ですねぇ」
「存続し続けるってことは、代謝し続けるってことでしょ?どうせ皆死ぬんだから、宇宙が滅亡してチャンチャンでも同じ事じゃないの?」
「何が『同じ』かの定義によりますが」
「それで?」
「私に答えはありません」

●ロキエル『泣かないで、泣きたいのはこっちのほうなの』 @asama_sousaku さんより

「もっと…っ!」
と潤んだ瞳で乞われて動物染みた欲求に支配されるのを喉元で堪える。グルと喉が鳴って、キツく目を瞑って衝動を耐える。やっとで目を開くと、赤くなったエルンストの目元から、ツゥと熱に浮かされた涙が零れ落ちる。指先でそれを拭ってなんとか微笑んでみせる。
煽り上手も結構だが…
「泣くなよ、エルンスト…」
言い終わりに、ハァッと熱い吐息が零れてしまうのは許して欲しい。泣きたいのは、こっちの方だぞ?と言ってやりたい。緩く突き上げを再開すれば、下の口の方が俺をキュウキュウ締めつけて来て、またうわ言のように
「もっと」
が繰り返される。理性が焼き切れるのも時間の問題だ。全く、本気で泣き出しそうだ…。明日だってあるのに…。
「エルンスト、エルンスト」
名を呼んで、けれども最早腰を止められる筈もない。
「いいの、か?」
と問えば、コクコクと何度も顎が引かれる。それで結局、荒っぽい欲望にジワジワと支配される。扉を一度開いてしまうと、もっと酷くしたくなる。欲望は留まることを知らない。断ってくれよと懇願するような気持ちに、こっちも目頭が熱くなる。
なのに、まだお前は俺を求めるのか。
このまま。
互いのタガが吹っ飛んで、理性的な俺達とは思えぬ快楽の泥沼にただ突き進む。
それさえも幸せだなんて、知らなかったんだ。

●ロキエル『きっと、意識が朦朧とする所為』 @utislove さんより
クラクラするんです。病気でしょうか。貴方の腕の中で、貴方の目に見下ろされて、行き場がなくてシーツをキツく握りしめる時。貴方が微笑んで
「愛してるよ」
と暖かな吐息で呟き深く口付ける直前、舌を絡め合う時、そして名残惜しく唇を話す時。目眩がして頭の奥がジンと痺れる。
まるで息が吸えなくなったみたいに、あるいは過呼吸を起こしてでもいるように、けれどもその息苦しささえ愛おしくて。
意識が朦朧として、だからきっとそのせいです。
「お願いです、ロキシー。もっと…っ!」
などと口をついて甘ったれた声が出てしまうのは。