珍しい事…




一年中春のように穏やかな気候の聖地にも、四季の移り変わりが導入されてしばらくした頃…

楽しめる程度の寒さに、雪ねずみポンポンのおかげでチラホラ雪も舞うようになった「冬」と呼ばれる季節のある日、微かに険しい顔をしたリュミエールが聖殿内を忙しげに歩いていた。


「オスカー」

よほどの緊急時にしか出さないようなキツイ声音で呼び止められたオスカーは、軍務の時に見せる無表情で振り向くもふわり表情を崩し

「珍しい事もあるモノだな。お優しい水の守護聖さまが、そんなに怖い顔でどうした?」

と首を傾げて見せた。
リュミエールはほんの少しの躊躇いの後

「王立派遣軍にある難民救援物資を、少しの間貸してくださいますか?」

とジッとオスカーを見つめて答えた。


こいつは穏やかな話じゃないな。と肩を竦めたオスカーは、じっくり話を聞く姿勢を取った。…女王交代から大きな災害は起こっていないし、起こっていれば自分が知らないはずはないと思ったからだ。


そんなオスカーにリュミエールは彼女の窮状を伝え始めた。
山ほどの激務、落ち着かない日常、このままでは疲労で倒れてしまう、と…その前にサクリアではなく物理的な何かで手助けをしたい、と…

「…それで難民救援物資か…」
気持ちはわからなくもないが…と苦笑したオスカーは、もっと良い手がある、と指を鳴らした。

「お前になら出来るし、お前にしか出来ないだろう…やるか?」


こうして某日、彼女の家の玄関先に大きな段ボール箱(中身はクラヴィス←)が届いたのだった。

End.



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