「うん、これなら…」
きっと大丈夫…の言葉を吐く息に溶かして、ふうわりと嬉しそうな微笑みが浮かんだ。
一年を通して穏やかな暖かさに包まれていた聖地に四季が導入され、時にはかなり寒い日が続くようになった「冬」のある朝。
大ぶりの荷物を抱えて、風の吹く公園を聖殿へ急ぐマルセルの姿があった。
執務にはまだ早い時間だというのに白く息を弾ませて、ほのかに頬を赤く染めて…聖殿に着けば一目散に、少し離れた執務室のドアへ向かった。
軽くノックをしてドアを開ければ、朝のコーヒーブレイクを楽しんでいた部屋の主…オスカーと目があった。
「オスカー様、お誕生日おめでとうございます☆」
とびきりの笑顔でマルセルは抱えていた荷物をテーブルに載せた。
凝ったラッピングに手を伸ばしながら、開けて良いかと視線で問いかけたオスカーに嬉しそうに頷くマルセル。
触れただけでハラリと解けるリボンを外せば、中から現れたのはバラの鉢植えだった。
赤いバラを好むオスカーが特に好きな、目の覚めるようなクリムソンカラー…控えめな甘さの芳香も、執務室で長く楽しめるように考慮されていた。
「さすがだな、マルセル。…気に入った。」
サンキュ、と目元を緩ませるその笑顔が見たくて頑張った甲斐があった。とマルセルの笑顔は更に深く輝いていた。
End.